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そこでこの原液を納入してくれないかと申し入れてきたのだが、残念なことに生産が追いつかず、やむなく断った。
このピッツァチェーンの注文に応じたら、肝心の日本で売るトマトジュースがつくれなくなってしまう。 じつは、逆浸透圧濃縮還元製法はゆっくりと時間をかけるため、大量生産にはあまり向いていないのである。

もう1つ、この製法の大きなメリットは、1年を通して同じクオリティのものがつくれることだ。 夏に収穫したトマトをそのまま冷蔵庫に保存しておき、生産するたびに出してきてトマトジュースをつくるなどということをしていたら、品質は劣化するし、とうていコストが引き合わない。
しかし、この冷凍原液なら保管が簡単だし、品質も維持できる。 必要なだけ使ってトマトジュースをつくっていけばよい。
トマトは夏の暑い時期に収穫されるものがもっともおいしく、栄養価も高い。 この逆浸透圧濃縮還元製法なら、日本が冬なら南半球でトマトを調達し、いつでも新鮮な旬のトマトを使うことができる。
そんなわけで、私たちはこの方法で、アメリカ、トルコ、台湾など、世界中の契約農家が生産したトマトを、現地工場で濃縮、冷凍、輸送し、日本で製品化して販売している。 こちらはシーズンパックとちがって、1年中、毎日生産できる。
この技術でつくられたジュースのパッケージには、かならず「濃縮トマト還元」と表示されているからすぐわかる。 海外で安いトマトを仕入れているなら、トマトジュースはもっと安くつくれるはずと思われるだろうが、残念ながらそうはいかない。
海外の工場で逆浸透圧濃縮をおこない、それを冷凍し、船に積んで運んでくる。 さらにそれを日本で解凍し、水を加えてジュースにすると、経費がかさんで、結局、1キログラムあたりの値段は日本産のトマトを使った場合と、同じになってしまう。

いちばんお金がかかるのは逆浸透圧濃縮のプロセスだ。 アメリカのトマトジュースの原液のように、どろりとしたペースト状になる真空加熱濃縮なら、半額程度でつくれるかもしれない。
しかし、日本の消費者は舌が肥えているから、安かろう、まずかろうでは絶対に売れない。 フレーバーを損なわず、フレッシュな味わいを保たなければならない。
そうなると、どうしても時間のかかる逆浸透圧濃縮しか考えられないのである。 それなら、もっと日本でトマトの作付けを増やせばいいではないかと思われるだろう。
トマトジュースのメーカーが、自分で生産すればいいではないかと。

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